アイフル 悪意の受益者等に関する判決文紹介

2010 年 7 月 2 日 金曜日 投稿者:mituoka

先日、アイフルの過払い訴訟で勝訴したが、その判決文中、
 
 ・ 「悪意」に関する部分
 ・ 「過払い金の返還範囲」の部分

 について、抜粋して紹介する

準備書面等でアイフルに対して反論する際のご参考にどうぞ

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第3 争点に関する判断

1 争点(1)「被告の悪意について」
(1)被告は悪意の受益者といえるか。
 悪意とは、法律上の原因を欠く利得であるとの認識(本件では、みなし弁済の要件を欠く結果、利息制限法の制限利率を超過する、法律上の原因を欠く弁済であるとの認識)と解すべきところ、貸金業法のみなし弁済の規定は利息制限法の例外規定である以上、その要件の存在は厳格に解されなくてはならず、その意味で、みなし弁済は容易には認められないという認識を、被告は貸金業者である以上有していたといえるから、被告においてみなし弁済の立証がされない以上、被告から、そのように認識することはやむを得なかったといった、後に述べるような特段の事情があったとの反証がない限り、被告においては、過払金が発生した弁済の受領時において、みなし弁済の要件を欠くとの認識があったと推定するのが相当である。
 ところで、本件においては、みなし弁済の立証がない(被告は、みなし弁済の主張は行わないとする。答弁書の「被告の主張」の第1項)ことは明らかである。また、弁論の全趣旨からしても、被告において、上記反証があったとは認められない。
 すなわち、悪意の受益者である旨の原告の主張に対して被告はこれを争い、縷々(るる)述べる 《主なものを挙げれば、被告は、原告の悪意の主張を否認し、①貸金業法17条、18条書面については消費者に交付し、また、被告はこれら書面について不備があるとの行政処分を受けたことがない事実を挙げ、貸金業法17条1項・18条1項の要件を充たしていると思っていたことはやむを得なかった旨主張する。②また、17条、18条書面の、被告における実際の記載事項を挙げ、貸金業法18条1項2,3号等の契約年月日、貸付金額等については、「施行規則に則り契約番号を記載することで省略した」と主張するとともにそのような記載が機械的になされるようにシステム構築を行っていた旨主張する(答弁書の「被告の主張」の第2項)》 が、反証というためには、過払金を生じる弁済の受領時の、被告にすれば悪意でないとする認識について、そのように認識することがやむを得ないといえる特段の事情の具体的な主張であるべきで、例えば、①については、行政庁の指導がなかったことをもって合法と解すればよいとする旨の被告の上記認識に一致する解釈を示す裁判例が相当数あったとか、上記認識に一致する解釈を示す学説が有力であったというような合理的な根拠があって上記認識を有するに至ったことの主張であることが必要と解すべきである。また、②については、そのように省略したものであっても合法的なものであると信じるについての具体的な根拠、即ち、例えば、その認識と一致する解釈を示す解釈を示す裁判例が相当数あったとか、上記認識に一致する解釈を示す学説が有力であったというような合理的根拠を主張すべきである。
 しかるに、被告の主張は上記のとおりであって、この特段の事情の主張(反証)とみることはできない。このように解することは最高裁判決平成19年7月13日(裁判所ウェブサイト)の趣旨にも沿うものと考えられる。また、他の弁論の全趣旨からしてもこれを充たす主張(反証)があるとは認められない。
 よって、本件取引について、被告は悪意の受益者といわざるを得ない。

(2)被告の悪意はいつからか
 なお、被告は過払金の発生する個々の弁済の受領時において、みなし弁済の要件を欠くとの認識があり、その結果、利息制限法の制限利率を超過する、法律上の原因を欠く弁済との認識を有していたといえるから、本件取引について、被告は過払金が生じる個々の弁済の受領時において悪意であるといえる。

2 争点(2)「悪意の場合の利息の発生時期について」
 金銭消費貸借の借主が利息制限法1条1項所定の制限を超えて利息の支払を継続し、その制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生した場合において、貸主が悪意の受益者であるときは、貸主は、民法704条前段の規定に基づき、過払金発生の時から同上前段所定の利息を支払わなければならない(大審院昭和2年(オ)第195号同年12月26日判決・法律新聞2806号15頁参照)。このことは、基本契約において充当合意が認められる場合でも、異なるところはないと解するのが相当である。
 以上から、本件取引について、利息は個々の過払金の発生の日から生じると解するのが相当である《「最高裁判決平成21年9月4日(裁判所ウェブサイト)参照」》といえ、過払利息を別紙「計算書」のとおり個々の過払金の発生する弁済の日の翌日から求める原告の請求は、この点是認できるといえる。

3 争点(3)「本件取引の過払金と返還範囲」
 以上から、原告の過払金は、別紙「計算書」のとおり生じているといえる。
 被告は、返還すべき過払金は経済的合理性の観点から相当分を減額した額になるべきである旨主張するが、これは独自の見解であり首肯できないことは明らかである(そもそも、すでに認定したように、本件取引について被告は悪意の受益者である以上、被告は、利益が現存するしないにかかわらず、受けた利益に利息を付して返還すべきである(民法704条)ところ、法人税を支払ってもその利得を得た事実に変わりはないから、被告の主張が是認できないことは明らかである。)。

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