過払い金の債権譲渡は公序良俗違反?

2011 年 1 月 7 日 金曜日 投稿者:mituoka

 昨日、1本の電話が入った

 「おたくの事務所が抱えているアペンタクルの過払い金を譲渡してくれないか?

 電話の主(Pさんと呼ぶことにする)は、アペンタクル(旧ワイド)に対して約60万円の借金があるらしい

 Pさんの提案はこうだ

 たとえば私の(正確に言えば私の依頼者の)過払い金が60万円、Pさんの借金が60万円だとして、私の過払い金返還請求権を30万円でPさんに売り、Pさんはそれを反対債権として相殺し、自分の借金をチャラにする

 アペンタクルに対する過払い請求事件は勝訴判決を得ても全額の回収は難しい

 和解しようとしても、ほんの数%の返還和解しか締結できない

 なるほど、こちらとしてはそのまま放置しておけば数万円しか回収できないはずが30万円も回収できるし、Pさんとしてみたら、本来であれば60万円を支払わなければいけないところをわずか30万円の出費で借金がゼロになる、というわけだ

 両者にとって損はなさそうだが、残念なことに、現在アペンタクルに対して係争中の過払い請求案件はないし、確定判決も持っていないので丁重にお断り申し上げた

 しかし、もし当方が同社に対して過払い金を持っていたとしても、この話、実際には簡単に進められるものではなかった

 まず第一に、当方の依頼者の承諾が必要

 60万円の債権(過払い金返還請求権)を半額で売ることに納得くださるか

 当事者同士がOKだとしても、次の判例も気になるところだ

 ちょっとケースは異なるが、ある弁護士事務所内で依頼者の過払い金を貸金債務を負う他の依頼者へ債権譲渡した事例が弁護士法73条等の趣旨に抵触し、また、公序良俗に反するとして無効とされた判例があるらしい(東京地裁平成17年3月15日)

 上記裁判は上告され最高裁で争われたと聞きますが、その最高裁判決を私は知りません。勉強不足で恐縮です。
 しかし、この手法が有効なら、当事務所内でバンバン債権譲渡をしていきます!

 また、債権譲渡契約締結に際し、本人確認・意思確認のためPさんと直接お会いすることが必要だろうが、今回のPさんは他県在住だったのでその点も問題となっただろう(やはり相手方にも司法書士か弁護士が付いていることが望ましいと思われる)

 だが、過払い金の債権譲渡・相殺を有効に成し得たら、アペンタクルはもちろん、SFコーポレーションクラヴィスDFSライフネットカードなど、過払い金をまともに返さない業者に対して非常に有効な手段だ

 今後、債権譲渡を積極的に研究していく必要があるかもしれない

 どなたか成功例があったら教えていただけないでしょうか?

 なお、Pさんによれば

 「yahooオークションなどで、過払い金債権が売りに出ていることもある

 らしい

 一般の方々の間では、過払い金を売ったり買ったり、が流行っているのだろうか?

 さて、先の判例で「公序良俗に反する」とあったが、過払い金をまともに返さないくせに貸金債権は強欲に取り立てる上記のような会社の態度こそ、公序良俗に反すると思うのだが・・・

(平成23年1月11日追記)
 先輩の同業者(司法書士)から、債権譲渡に関する資料をいただきました。それによると、名古屋簡裁において、貸金業者の貸金支払請求訴訟に対して、被告の残債務者が過払金債権の譲渡を受け、相殺して請求棄却となった判決があるそうです(つまり、過払い金の債権譲渡が有効とされた。名古屋簡裁21年5月27日)。いくつかの問題点をクリアすれば、過払い金の債権譲渡・相殺は間違いなく有効な手段として利用できます

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