42年ぶり
2015 年 9 月 3 日 木曜日 投稿者:mituoka
僕が小学校に入ったばかりのころ。父が「新しいおそばやさんができたみたいだから行ってみよう」と言った。そこで僕はラーメンを食べた。美味かった。(静岡のおそば屋さんには、ラーメンをメニューにしているお店が多い。和風ダシはラーメンによく合う。)
その後は、そのお店に足を運ぶことは一度も無かったけど、「出前」はよく頼んだ。
成長するにつれ僕の好物は、ラーメンから「きつねうどん」へと変貌していった。それを大盛りで。
大学の時分に東京から帰省すると、8年前に亡くなったおばあちゃんがきまって「陽、きつねの大盛りを持ってきてもらうか?」と言ってくれたっけ。
今年の8月30日。
その日で閉店すると聞き、僕は42年ぶりにお蕎麦屋さんに足を運んだ。
店内の雰囲気は遠い昔の記憶のまま。
でも、ご主人の精悍な顔に深く刻まれたいくつもの皺と、銀色にひかり輝く髪は、長い歴史を雄弁に物語る。
最後のきつね。
しっかりダシの効いた、濃い口のつゆ。
42年変わらぬ味はやっぱり美味い。
名残り惜しいが思い切ってつゆを飲み干した。
もう食べることができないきつね、そして、忘れることができない味。
おばあちゃんの思い出とともに、ずっと心に残る。
【司法書士法人静岡 代表 三岡 陽】