コラム
貧困問題と法律家の役割
2008/06/06
来月上旬に県司法書士会では会員を対象に「貧困問題と法律家の役割」と題した研修会を開催する。弁護士の森川清氏を講師に迎えるそうだ。
平成18年に経済協力開発機構(OECD)が発表した報告によれば、日本の相対的貧困率(可処分所得分布の中央値の半分以下の所得しかない人口の割合)はアメリカに次ぎ世界第2位を示しています。にもかかわらず、生活保護制度が捕捉する貧困世帯の割合は20%と推定されており、実際に生活困窮状態に陥っても保護が受けられない世帯が多数存在し、生活保護制度が十分に機能していない現状があります。
現代の貧困は、雇用の不安定化や失業、生活保護制度の機能不全、多重債務など様々な要因が考えられますが、どれも看過できない問題ばかりです。今後、法律家として、「貧困問題」という大きな問題に対して、具体的に何ができ、何をすべきかを考え、活動しなければならないと考えます。
(研修趣旨より)
この研修趣旨に見るかぎり、ショッキングな数字が並んでいる。貧困の一因として「多重債務」が挙げられている。債務整理事件を通じて、依頼者の生活が改善された例が多いと自負するが、そうではないと思われる事例も存在する。
司法書士に債務整理を依頼すると、サラ金各社からの請求はストップする。過払い金返還請求の場合、和解して過払い金が返還されるまでに数ヶ月要すのが通常だが、1ヶ月もたたないうちに「過払い金はまだ回収されていないか?」と催促の電話が入る。急を要する支払いがあり、すぐにでもお金が欲しいのだという。毎月10万円以上の支払いがストップしたはずなのに、それでもまだ金銭に余裕がないとなると救済方法として債務整理では足りず、もっと抜本的な改善策が必要となる。上記の研修は、私たち実務家にとって、その指針となるかもしれない。法律家ではどうすることもできない問題なのか否か。研修についてはまた報告いたします。