コラム
司法書士試験 ~少年老い易く学成り難し~
2008/06/13
今年も夏が目前に迫った。この季節になると思い出すのが毎年行われる司法書士試験。私は実に7回も受験したので年中行事のようなものだった。年に1回、7月上旬の試験会場でこのときだけ顔を合わせる仲間もいたので「まるで織姫と彦星だな」と冗談を言い合っていた。
手前味噌のようで恐縮だが、司法書士試験の合格率は毎年2.7%前後。つまり100人受験して合格するのは3人未満。昭和54年に国家試験となり、その後バブル期における不動産登記事件数の増大と相俟って、国家試験の中でも有数の人気資格となり難関試験となった。
このHPを受験生の方々が見てくれているのかわからないが、私なりの受験のコツをお話します。とにかく「何が不要か」を知ることが肝心。この試験の勉強を始めてみると民法・刑法・会社法・登記法・民事訴訟法・民事保全法などの条文・判例すべてを押えなければという気に誰もがなる。そうなると袋小路に入ってしまう。条文・判例の数は星の数ほどあるからだ。それよりもまずは「どの条文・判例が不要か」を見極めること。出題頻度の高い論点・条文・判例だけ勉強すればいい。8割程度の正答率で合格できる試験。満点を取る必要はない。もし知らない論点が出たらそれは思い切りよく諦めて、勉強した点を確実に正答すればいい。特に短期合格を狙う人はそれぐらいの覚悟が必要。過去問の研究が鍵になる。しかし過去問はたかが30年ほどの蓄積しかない、その気になればさほど難しくはないはず。
とはいえ、努力家とは程遠い人間である私も、初学者のときは連日かなりの勉強をした。20代後半まで判例はおろか、六法すら読んだことがなかったのでまずは条文をしっかり把握しようとトイレにまで六法を持ち込んた。深夜というより早朝にようやく勉強を終え就寝したはいいものの夢の中でも六法を読んでいる日々が続いた。眠りが浅く、目覚めるとさっきまで読んでいた夢の中の六法の条文が正しいものなのか不安になり、すぐさま机に戻って「本物の」六法を開いた。人並みの脳しか持ち合わせていない私にとってはとても難しい試験だった。今でも合格できたのが信じられない気がするほどだ。法科大学院(ロースクール)創設により司法試験が合格し易くなったことで、司法書士試験を諦めて司法試験に鞍替えする人もいると聞く。
初めて受験したのは29歳のとき。その頃感じたことは「もっと若い時期に勉強を始めればよかった」。膨大な論点を処理するには若い脳のほうがいいに決まっている。覚えたはずが忘れてしまった、六法や参考書を何度読んでも覚えられない、こんなはずじゃないのに・・・と何度も悔しく思った。しわが増え、体力が衰えていくように、脳も年々その力が減じる。若い受験生のみなさん、今やらねば損だ。なぜやらない?数年前に立てた志を忘れたか?遊んでいる暇はない、合格してから思い切り遊んでください。若く優秀な司法書士たちの出現を司法書士界は待っています。