コラム
洞爺湖サミット、北方領土問題を放棄
2008/06/30
福田首相は7月7日から洞爺湖で行われるサミット(主要国首脳会議)で北方領土問題を議題としないことを決めたという。この決断には自民党内でも「国際社会に北方領土は要らないとシグナルを送ることになる」と批判があるらしい。
今回の決定について政府筋は「特定2国間の領土問題はそもそも、主要8カ国(G8)が一堂に会する全体会議の議題になじまない。」と説明しているらしいが、これはとてもおかしな釈明だと思う。まず、北方領土問題は国際社会の圧力を借りなければ到底片付くものではない。しかも、中学の歴史の授業で習ったとおり、北方領土が旧ソ連統治下となる発端となったのは旧ソ連・米・英首脳によるヤルタ会談(1945年2月)である。その3カ国が北方領土のソ連帰属を決定したのであり、日ソ間で決めたことではない。つまりこの問題は「特定2国間」だけのものではないのだ。ヤルタ会談の当事者であるロシア(旧ソ連)・米・英の3カ国が洞爺湖(北海道)に出揃うというのに、絶好のチャンスを「放棄」するというは納得いく話ではない。
先日のコラムにおいて、日本外交の拙さを書いたばかり。北朝鮮がテロ支援国家指定解除という、アメリカとのまさに「特定2国間」の問題を6カ国協議を利用して成功させたのとは対照的だ。何年経っても「敗戦国」として下手(したて)に出なきゃいけないのか。戦後賠償未解決(国家間の賠償は講和条約等で解決済とされるがここでいうのは民間人への賠償)という視点からすれば福田首相も辛いところだろう。