コラム
GK法施行に伴う司法書士執務の変化
2008/04/03
本年3月1日GK法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)が施行され、それを受けて変更された県司法書士会会則も始動しました。
不動産登記事件に関して申し上げますと、GK法上では「宅地または建物の売買に関する行為又は手続」において依頼者(売主・買主)の本人確認を求められていますが、県司法書士会会則においては「すべての」登記事件において本人確認が義務付けられました。売買以外の登記事件においても厳格(厳密、と申し上げたほうが適当か)な本人確認が必須となったのです。
この会則変更については、司法書士の間でも反応・感想は様々です。
反対派の意見としてよく耳にするのは「GK法以上の義務を課す必要などない、今までもこれからも司法書士の執務姿勢はこれからも変わらないんだから。」というもの。
担保抹消登記、あるいは住所変更に伴う名義人変更登記などの場合でも厳格な本人確認は当たり前なのだ、という見解をお持ちの司法書士は上記の感想を漏らすのでしょう。
しかし、実務界においては、担保抹消・名義人変更などの登記事件受託に際して本人確認を怠ってきた司法書士は星の数ほどいるはず。
よくあるケースとして担保抹消登記申請の際、とっくの昔に亡くなっている不動産所有者の相続登記(担保抹消の前提として申請すべき登記です)を省いていた司法書士は多く存在します(『月報司法書士』に毎月掲載される懲戒処分例などを読むとそれは明らかです)。この場合、担保抹消登記の申請人は故人となります。
つまり、とてもおかしな話ですが、亡くなった人間から登記事件を受託していた司法書士がたくさんいたのです(笑)!本人確認などできるわけがない事例です。
厳格な意味での本人確認作業をすべての登記申請事件において行うことになれば、上記のようなおかしなケースは無くなるでしょう。
これも意見が分かれるところですが、不動産登記法は物権変動を登記簿に忠実に再現することを要請しているのだという見解から中間省略登記厳禁という立場をとる司法書士界にとって今般のGK法・県会則変更は「渡りに船」だったかもしれません。
GK法に従順な、犬のような会則変更だと言われようと、これにより多くの司法書士が本来の姿に立ち返る一助となる可能性もあると思います。
とは言え、会則変更によって私たちの手間が膨大に増えたことは確かです・・。
会則に応えつつ、依頼者に迷惑のかからないような本人確認事務を心がけていきます。
(三岡 陽)