コラム
華麗なる一族
2008/07/14
山崎豊子原作、キムタク主演のドラマの話ではありません。競馬の世界での「華麗なる一族」のお話をします。一昔前、日本競馬界の華麗なる一族といえばイットー、ハギノトップレディー、ダイイチルビーを生み出したマイリーを祖とする一族を指しました。しかし、ダイイチルビーが91年に安田記念・スプリンターズSを勝ってからはこの一族からGⅠ勝ちはありません。現在の華麗なる一族といえばなんと言ってもスカーレット一族でしょう。
スカーレット一族、と勝手に名づけましたがこの祖は「スカーレットブーケ」(その母、スカーレットインクを祖とする説もある)。スカーレットブーケは母としてダイワルージュ、ダイワメジャー、そして現在の最強馬ダイワスカーレット、といった活躍馬を次々に生み出した。特にダイワメジャーとダイワスカーレットは兄妹合わせてGⅠ8勝。ダイワルージュはすでに繁殖入りし、先日その仔ダイワバーガンディ(スカーレットブーケにとっては孫)が見事に新馬戦を圧勝。スカーレットブーケの血の優秀さをまたしても証明しました。
スカーレットブーケは1990年にデビュー。翌年の2月にクイーンカップで重賞初勝利を飾り、その後も活躍を続け通産重賞4勝を挙げた。クイーンカップ当日、まだ学生だった私は東京競馬場でそのレースを見た。もっとも、スカーレットブーケ目当てに府中に向かったのではない。その日はあのオグリキャップの引退式が行われる予定だったので、オグリ最後の勇姿を見ようと東京競馬場に赴いたのでした。武豊を背にしたオグリキャップの元気な姿に涙した2時間半後、スカーレットブーケという名の若い牝馬が武豊に操られ鮮やかな差し切り勝ちを決めた。翌日の新聞には「オグリに捧げる深紅の花束、スカーレットブーケ」という見出しが躍っていました。なんとも素敵な見出しに私は再び涙を流しました。だから私にとってスカーレットブーケはとても思い出深い馬なのです。
直系子孫に限らず、スカーレットブーケには、姉に報知杯4歳牝馬特別の優勝馬スカーレットリボンや、ヴァーミリアン、サカラートの祖母スカーレットローズらがいます。まさに華麗なるスカーレット一族。ダイワルージュはもちろん、いずれはダイワスカーレットも優秀な仔を送り出すことでしょう。しかし、ダイワスカーレットにはお母さんになる前にもう一仕事、やり遂げてもらいたい。今秋ぜひとも牡馬を蹴散らし天皇賞を勝って、「史上最強牝馬」の称号を手にしてから牧場に帰ってもらいたいと思います。