コラム
弁護士側の「3000人」合格見直し論はあまりに利己的である
2008/08/18
8月15日付の法律新聞に、弁護士側などから次々に湧き上がる「司法試験合格3000人反対論」への法科大学院協会の反論が掲載されている。趣旨は以下のとおり。
1)司法制度改革の目標が質量共に豊かな法曹人口を確保することと、国民があまねく司法サービスを受け入れられるようにするというものであった
2)上記の目標達成は法曹の飛躍的増員がなくては達成できない
3)これらに関しては法曹を含む国民的合意であったはず
4)新制度第一期修了者が実務について半年を経たにすぎないこの時期に法曹の質の低下を判断することは時期尚早である
また、ここが一番肝心であるが、7月の日本弁護士連合会緊急提言が今年度合格者のペースダウンを求めている点に対しては、次のように激しく非難している。
「法曹の増員計画を信じて法科大学院に入学し、いま懸命に勉学を励んでいる全国の法科大学院の学生を裏切り、現場に無用の混乱をもたらしている」
「今年度の合格目標値を減らすことは既に今年の司法試験を終えた受験生へ無用な不安を与える」
「このような議論は、多様な人材が法曹の途を選ぼうとする意欲を減殺し、むしろ法曹全体の質的低下を招く」
まったくおっしゃるとおり。既得権益を守ろうとする弁護士側の意見はあまりに利己的である。先日のコラムにも書いた私見であったが、法曹人口の増加は競争を生んで法曹の質のアップにつながるはずだし、また3000人合格見直し論は現在勉強中の法科大学院生の気持ちを考えず目先の自分たちの利益だけに目がくらんでいるとしか思えない。「法曹の質の低下」を危惧する法曹自体、すでに質が低下しているのでは?とさえ感じる。