コラム
会社法務 株券不発行制度について
2008/09/10
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1.会社法の原則
商法では、株券は発行するのが原則でありました。しかし、会社法(平成18年5月1日施行)では、株券不発行を原則としました。
これは、これまで中小企業においては株券を発行していない会社が圧倒的に多かったこと等の事情が考慮されたからです。したがって、これから新たに設立される会社は、発行する旨の定款規定を置かないかぎり、株券不発行会社です。
ところが、会社法施行以前から存在する会社については「会社法に施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」にもとづき「株券発行会社」とみなされてしまいます。そのため、現在の貴社の会社謄本には「当会社の株式については、株券を発行する」との規定が登記されています。
2.株券発行会社の場合
(1)会社法第215条により、下記の場合、非公開会社(株式譲渡制限の規定がある会社、貴社は非公開会社にあたります)は、株主から請求があったときには遅滞なく株券を発行しなければなりません。
①株式の発行したとき(増資をしたとき) ②株券の併合をしたとき
③株式の分割をしたとき
(2)会社法第219条により、下記に掲げる行為等をする場合には、会社に対し株券を提出しなければならない旨を公告し、かつ、株主等に各別に通知しなければなりません。
①株式の併合 ②取得条項付株式の取得 ③組織変更 ④合併 ⑤株式の交換
⑥株式移転
(3)会社法第221条により、株券を喪失した株主のために、「株券喪失登録簿」を作成し、会社に備え置かねばなりません。
3.株券「不発行」会社の場合
(1)会社法215条のいずれの場合でも、株券を発行する義務はありません。
(2)また、219条についても、株券不発行会社は公告・通知義務はありません。
(3)株券喪失登録簿の作成義務はありません。
※ 同族会社の場合、「発行会社」のままでも、2(1)のように、株主から発行請求がされることはないでしょうが、株式の譲渡・相続等により新たな株主が出現したときのために備えて、不発行会社への変更をしておけば万全といえます。また、不発行会社になれば、その他の場合でも、発行手続きの煩わしさから逃れることができます。上述のとおり、「株券不発行」は新しい会社法の原則でもありますので、株券不発行へ変更する会社が多いのが実情です。
※ 株券不発行会社になるためには、株主総会において「株券を発行する」規定を廃止する旨の定款変更決議が必要です。その総会議事録にもとづき、不発行会社への変更登記が可能となります。その登記申請により、現在登記されている「株券を発行する」旨の定めが削除されます。