コラム
訴訟勉強会のメンバーとして
2008/04/10
民事訴訟において、司法書士が関与する割合は多くなっている。正確な数字を把握せずに申し上げるのは恐縮だが、平成15年に簡裁代理権(法廷に立って弁護人として活動できる権利)が司法書士に付与されて以来、簡裁(簡易裁判所)での弁護活動はもちろん、地裁(地方裁判所)における本人訴訟支援型での司法書士の関与は増加傾向にあろう。
※代理権が付与された司法書士とは、正確に言えば簡裁訴訟代理認定試験に合格した司法書士
※本人訴訟とは、弁護人を擁立せずに自分で裁判を行うこと
簡裁では訴額(争いの額)が140万円以内の事件のみを扱い、それ以外を地裁が扱う。つまり、140万円を超える事件について司法書士は代理権を持たない。このことから、司法書士にはとても中途半端な権限しか与えられていないようにも見える。実際私も当初はそう思った。しかし、一般市民が係わる民事事件は簡裁管轄のものが圧倒的に多いように感じる。なぜなら、司法書士の代理権が簡裁のみに関するものであることを知らず、弁護士との違いを把握していない依頼者が数多く当事務所に訪れるが、その事件の大半は簡裁管轄であるからだ。こうしてみると弁護士過疎地域においては、司法書士に簡裁代理権が付与された意義はかなり大きい。
一方、一般市民が訴額140万円を超える事件の相談に訪れるケースも時にはある。
地裁・簡裁を問わず民事訴訟においては裁判所に提出する書面(訴状、準備書面、答弁書、証拠書類など)の巧拙のみで実質的に勝敗を決する場合が多い。つまり弁護人を立てるまでもないケースも多いのだ。それらの書類作成に関しては平成15年以前から司法書士は関与していた。また、地裁事件と簡裁事件、訴額は違えどどちらも同じ民事訴訟、裁判の形式・方法は原則的には変わらない。平成15年以降更なる訴訟テクニックを身につけた司法書士が本人訴訟支援(書類作成を含む)という形で地裁事件に数多く関与しているのは当然で、140万円を超える事件においても弁護士に頼らず司法書士を利用して裁判に勝つことは可能だ。
これらの理由から、簡裁においてのみの代理権に不便を感じたことはほとんどない。大胆な私見だが、大企業は弁護士に、そして多くの一般市民は司法書士に訴訟を依頼する棲み分けができてきたようにも思うし、その意味で司法書士は(少なくとも一部の司法書士は)「町の法律家」という肩書きに恥じない存在となっている。
さて、昨年の秋、大先輩のベテラン司法書士が中心となり「訴訟勉強会(仮称)」が発足した。メンバー数は20数名。私も事務局として微力ながら活動を支えている。この会、まだ静岡県司法書士会に登録もしておらず正式名称も決まっていないし、ここ数ヶ月お休み状態であるが、今月から本格的に始動する予定である。
この会のメンバーのうち、法廷に立った経験のある司法書士は相当数に上るが、サラ金業者を相手とする訴訟(いわゆる過払い金返還請求事件)のみの経験者も多いようだ。債務整理を業務とする司法書士が激増した関係上、過払い金返還請求事件に係わる司法書士がたくさん存在するのは当たり前で、それ以外の事件についても司法書士の活躍は期待されている。
私の場合、上記の過払い金返還請求事件のほか、不法行為の損害賠償請求事件、家賃未払い(地代・賃料未払い)に基づく家屋(土地)明け渡し請求事件などにおいても法廷に立ったことがあるが、これらも民事訴訟においては典型的な事件ばかりで、まだまだ経験不足であると自覚している。恥ずかしながら、このHPにおいて民事訴訟に関する記述が少ないのはこのためである、と白状します。
勉強会の会員の中には、おそらく弁護士でも頭を悩ますであろう難解な地裁事件を数多く受任して書類作成による訴訟支援で成果を挙げてきたメンバーもいる。経験豊富な彼らから多くを吸収したいと思います。 (三岡 陽)