コラム
遠方からのご依頼について
2008/04/17
先週、NHK総合テレビの「クローズアップ現代」において多重債務者の問題を取り上げていた。
地方において、年金受給者や生活保護を受けているかたが多重債務に陥るケースが最近増えているらしい。
その中で特に気になったのは、地方在住の多重債務者は地元から遠く離れた法律専門家のところへ相談に行く傾向にあるということだ。司法過疎地域(弁護士・司法書士が存在しない地域)では当然の話だろうが、そうでない場所においても近所の法律家へ相談することを敬遠するかたは多いようだ。
地方においては『世間が狭い』ので地元の司法書士・弁護士に相談することによって「自分が多重債務者であることが近所に知れ渡ってしまうのではないか」と警戒するらしいのだ。
多重債務に陥る原因は、実は借りた側ではなく貸し付けた側にある場合が多いのだが、本人は多重債務を恥と感じる。他人(法律家)といえどもそれが近隣の人間ならば、打ち明けることなどできるわけがないのだろう。また、司法書士・弁護士には守秘義務が課されているので世間に知れ渡る心配はないのだが、法律事務所へ入る姿を他人に見られやしまいか、見られたら自分の窮状が世間にバレてしまう、と恐れるらしい。だから、高い交通費を負担してまで遠方の法律事務所へ出かけるということだ。
先日、このコラムで東京の司法書士がカラー折込広告を静岡市で配布したことについて触れた。やや否定的・懐疑的な見解も述べたが、上記のような事情を考慮すれば多重債務者にとってあの広告は東京からの救世主だったのかもしれない。
他の司法書士・弁護士のHPにおいても、遠方の多重債務者からの依頼を募っているものが多い。以前述べたようにやはり費用面(依頼者が負担する交通費)・面談の難しさ等の問題はあるものの、それらは決して非難されるものばかりではないとも思えてきた。
依頼者の立場・気持ちを理解しなければ私たちの信頼は得られないし、弁護士事務所・司法書士事務所はいつまで経っても敷居の高い場所であり続けるだろう。「町の法律家」を標榜する司法書士の一人として大いに考えさせられました。
(三岡 陽)