コラム
さようなら、アストンマーチャン
2008/04/24
昨年3歳牝馬(メス馬)として15年ぶりにスプリンターズ・ステークスを制したアストンマーチャンが今月21日、急性心不全のため死亡した。現役のスターホースがレース中の故障以外の原因で亡くなるケースはあまり例がないので驚きました。
マーチャンの父はアドマイヤコジーン。G1朝日杯をエイシンキャメロンとの競り合いの末に制し、やはりG1の安田記念をも快勝した名馬で、1600M前後の距離を得意にした芦毛(グレイ)のスピード馬でした。マーチャンはそのスピードを確かに受け継ぎましたが、毛色だけは別。父とは対照的な栗色で、陽の光にまぶしく輝いていました。首を高くして、少し短い脚を懸命に動かしてのピッチ走法は、その毛色とあわせすごく可愛らしく、特徴的でした。
マーチャンのオーナーは女性。マーチャンは初めての所有馬だったそうで、オーナーの幼い頃のあだ名の一部を名前に取ったといいます。思わず「まーちゃん♪」と呼びかけて鼻面を撫でたくなるような愛らしい馬でした。父アドマイヤコジーンが安田記念を勝ったのが6歳のとき。父の成長力をも受け継いだのなら、まだ3歳のマーチャンにはこの先の更なる活躍が約束されていたはず。
あのウオッカ、そしてダイワスカーレットとの「3強」対決となった桜花賞での激闘。そして迎えた昨年9月のスプリンターズ・ステークス、大方の予想を覆しマーチャンはスタート直後から迷わず先頭に立ち、そのまま逃げ切りました。最後の直線、さすがにバテバテになりながらも懸命に踏ん張り、並み居る年上の男馬たちを抑えての快挙達成でした。あの清々しいレースぶりと、感激していた中館ジョッキーの姿はとても印象的です。
テンポイント、サクラスターオー、マティリアル、メルシーアトラ、ケイエスミラクル、オンエアー、キリスパート、ライスシャワー、サイレンススズカ等々。レース中の事故で命を落とした馬は数えきれないほどいますし、競馬というものは悲しい出来事と常に隣り合わせなのでしょう。しかし・・・。
まーちゃん、安らかに眠ってください。