コラム
北方領土問題と法務局の統廃合
2008/04/30
弁護士と司法書士向けの「法律新聞」4月25日号によると、釧路地方法務局根室支局廃止の方針を法務省が打ち出したという。根室支局保管の不動産の登記簿は釧路本局へ移される見通しだ。
現在、北方四島の土地の登記簿は根室支局に保管されている。それが釧路へ移されても廃棄されるわけではないので問題ない、という単純な話ではない。
四島は現在ロシアに占領・支配されているが、登記簿上は当然に元島民たち日本人所有となっている。そのため、四島が自分たちのものであることを示す「証拠」である登記簿が地元から消えてなくなることに、元島民らは大きな衝撃を受けている。
全国の法務局の廃止・統合が進んでいる。扱う登記事件数が少ない法務局が廃止されていくのは時代の流れかもしれないが、このような問題が起きるごとにその地域で賛否両論が巻き起こる。この根室支局の件に関しては、その歴史的経緯からより強い反発が起きていることが容易に想像できる。根室市長も、鳩山法相への直談判を検討しているほどだ。
例の鈴木宗男氏失脚事件以降、日本は北方領土政策を方向転換し四島への援助を打ち切ったがこれが功を奏しているとは思えない状況。プーチン主導によるロシア経済の飛躍的発展がそれに密接に関連している。そこへもってきて今回の法務局廃止問題。元島民にとって、北方領土がさらに遠い地になることは否めない。国家予算削減という建前だろうが、見直しが必要なものは他に山ほどあるのではないか。今後の動向について注視したい。