コラム
自己破産者の減少(過払い金の増加)
2008/05/16
前回のコラムにおいて、「多重債務者減少」について触れたが、今回はそれに関連して「自己破産申立の減少」について書いてみたい。
司法統計によれば、2003年をピークに自己破産申立件数は減少を続けている。この統計からすれば一般市民がゆとりある暮らしも取り戻しつつあるように思えるが、前回と同様、この話には裏がある。
司法書士法改正の影響で司法書士の債務整理受任事件数が激増したこと、そして2006年1月の最高裁判決で理論が確立されたこと等により、サラ金業者からの過払い金回収が容易になった。過払い金とは、サラ金業者に支払い続けてきた違法な利息分のこと。それを取り戻すのは借主にとって当然の権利である。
回収に成功した過払い金は、他社への返済に充てる。さすれば当然に総債務額は減少する。それにより借金ゼロになれば、計算上は破産申立により免責を得たと同様の結果となる。
多重債務者減少を目指し、貸金業法改正にようやく重い腰をあげた日本政府であるが、金融庁の一部では、法改正により自己破産申立件数が再度増加傾向に向かう恐れがあると見ているらしい。借り入れ総量規制により借り換えが容易でなくなるし、グレーゾーン(違法利息)撤廃により理論上過払い金そのものが消滅するのであるからこの予測は的を得ている。
政府の発する景気回復を匂わす情報郡に、私たち一般庶民は戸惑う。実感の伴わないニュースに共感はできない。
ネットカフェ難民、契約社員・派遣社員の増加、不安定な物価、自らが破産状態の日本国・・・。
潤っているのは一部の大企業だけだ。