コラム
ドバイ 「明と暗」
2008/05/20
繁栄を続けるドバイ。1970年代に首長の一声で原油依存を見直し、観光や金融などの産業に力を注いだ結果、瞬く間に巨大シティーが砂漠の中に出現した。サブプライム問題で各国の株価が下落しても、ドバイ市場だけは高騰を続けた。日本の大手ゼネコンも、ドバイでの建設受注に躍起になっている。いまや世界のマネーはドバイを中心に動いていると言っても過言ではない。
この1月、私はドバイに行った。新婚旅行である。東京なんて目じゃない巨大ビルが連なる街並。見上げていると首が痛くなってくる高さのビルばかり。高さだけではなく、その建築様式も贅の限りを尽くしたもの。道を行き交う超高級車の数々。街全体が眩くギラギラ輝いている。これが未来都市というものだろう。建設中の高層ビルもたくさんあって、ここには永遠の発展があるかのごとく思えた。夢の中にいるような1週間の滞在だった。
帰りのドバイ国際空港で、異様な光景を目にした。空港内のあちこちに横たわるアジア人と見られる出稼ぎ労働者たち。建築現場での重労働に痩せこけ疲れ果て、母国への帰途につく出発までの僅かの時間も睡眠に充てたいのだろう。通路までも彼らで埋め尽くされ、空港内を移動するにも一苦労だった。ドバイ高層ビル群の労働力の大半はインド人を主とする出稼ぎ労働者だという。彼らは日本円にして僅か月額3万円の薄給。幻想的な都市建設の主役は彼らでもある。
しかし、ここ最近このような労働力確保に苦労していると聞く。インドの経済成長により母国で好条件の労働がたくさん現出しているからドバイに来るまでもないのだ。これに建設資材価格の高騰の影響も加わり、ドバイで建設中のビルの中に完成予定を遅れるものが目立ち始めているという。日本のバブル期のように投機対象として不動産売買が盛んだが、これもいずれ頭打ちになること必至。
幾多の歴史が物語るように、光と影、繁栄と没落、すべてが背中合わせなのだ。
かつて、限りある原油に早々と見切りをつけ大胆な方向転換を断行し、この驚異的発展を生んだ賢明で柔軟なドバイ首長は「現状にあぐらをかいてはいけない」と新たな産業発掘を画策中なのかもしれないが。