コラム
誇りの報酬
2008/05/21
先月このコラムにおいて「消費者金融会社からの督促状」というタイトルの文章を書いた。
ある男性が、消費者金融から数十万を要求されたが、私が介入した結果支払いを免れた。
その男性が当事務所に来たのは4月中旬。私が「着手金は今月末、報酬は来月末に支払ってください。それは可能ですか?」と尋ねると、彼は「必ず支払うから今すぐ事件を解決してくれ」と言った。いつ家に取り立てが来るかを恐れ、困り果て、私を頼ってくれている男性に心を動かされ、二つ返事で依頼を引き受けた。
その日のうちに、法的根拠が存在しないので支払う意志がない旨の内容証明を消費者金融に送った。数日後、その会社から「了解しました。もう督促はしません。」との返事を得た。私は喜び勇んで依頼者の携帯へ電話をした。すぐに「朗報」を伝えたかった。しかし、何度電話をしてもつながらない。着信を見ているはずなのに、折り返しの電話もいただけない。これが数週間続いた。ついに私は諦めた。
悔しい。残念だ。報酬をもらえないことへの嘆きではない。もちろん仕事であるし、私にも生活があるから報酬は欲しい。だが、彼へ告げていた報酬は当事務所規程から大幅に値引きしたものであったし、もし月末に苦しくなったら分割で支払ってくれても構わないと伝えていた。だいいち、報酬を催促するために電話したわけじゃない。ホッとさせてあげたかっただけ。「助かったよ、ありがとう」の一言を聞きたかった。受任のとき、私は彼をただ単に助けたいと思った。それが裏切られたことに悔しさを感じる、腹が立つ、哀しくなる。私が欲しいのは金銭面での満足だけではないのだ。
もちろん99%以上の依頼者は素晴らしい人格者であるし、決まりごとも守ってくれる。この方々に支えられ私たちは生計を立てている。感謝の気持ちでいっぱいだ。
だが、ほんの一握りの依頼者は前記のとおり私との約束を簡単に反故にする。
債権者へ支払う金額を私が立替えたものの、その直後音信不通になった依頼者もいた。このような「被害」に逢った司法書士・弁護士は全国に山ほどいるはずだが、HPやブログで「加害者」に対する恨み節を聞いたことはない。だけど、みんな言いたいはずである。「そんないい加減な態度では再び何らかの問題を抱えますよ!」と。
司法書士事務所へは登記事件、民事訴訟、供託事件、相続問題、会社設立、様々な相談が舞い込んでくる。多重債務問題についていえば、ほとんどの場合が貸す側(消費者金融会社)に問題があるのだが、上記の方々の場合は依頼者自身に問題があったように思えてしまう。
代弁者という形のズルい手法で、正直に心情を吐露させていただきました。