コラム
中小企業の経営の承継について
2008/07/07
中小企業の社長が死亡し、その子供が社長に就任する。よくありそうなケースだが、この経営承継が困難なケースもある。中小企業の経営者の個人資産のうち、事業用資産(自社株式も含む)が約3分の2もの割合を占めている。それらを生前贈与により承継者(たとえば長男)に譲っても、社長死亡後に他の相続人(次男等)から遺留分減殺請求(※)されれば長男は資産を手放さなければならず、それが事業用資産であれば経営を続けることが困難になる。
中小企業の存続とそこで働く労働者の保護を目指し、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が施行される予定。これにより、中小企業の後継者が旧代表者から贈与を受けた株式等の全部又は一部を遺留分算定の基礎となる財産の価格算定時に算入しないこと等が可能になる。平たく言えば、事業用資産を手放さずに済むようになる。
この法律につき、一昨日の静岡県司法書士会の研修において京都司法書士会の内藤卓氏に講義いただいた。この法律は民法の特別法であり、雇用確保という意味で「貧困問題」にも絡み大きな意義を持つものだと感じました。
※遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)
相続人の相続分に対する期待権を保証する民法上の制度。遺留分とは被相続人の処分(贈与等)によっても奪うことのできない相続人の取り分。上の例で、旧社長が長男に生前贈与しなければ次男らはもっと多くの相続財産を得ることができたわけで、民法の原則からすれば、次男ら他の相続人は長男に生前贈与された財産の一部を取り戻せる。